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明日は天気になれ

坂口安吾という作家をご存知ですか?

私の場合、
高校の時の国語便覧の文学史でその存在を知りました。

『無頼派』に属し、
代表作に
『堕落論』、『白痴』とあるのを見て
なんとも恰好のいいことだと感心したものです。

↓坂口安吾(他に有名な写真がありますが、あまりの汚部屋なのでこちらを)

坂口安吾


それで実際に著作を読んでみると
明治の文豪と違い、
戦後にご活躍の昭和の方だけあって
とても読みやすい文体で、
推理小説から、歴史小説、エッセイなど
なかなか面白く読ませていただいた記憶があります。

先日のお休みに本の整理をしておりましたところ、
彼の『明日は天気になれ』
という随筆を発見しました。

ゴルフとか相撲とかについて書いてあったな~くらいの記憶しかなかったのですが、
ぱらぱらとめくってみますと、


神伝夢想流・・・のタイトルが・・・

ん?
なにこれ
そんなのあったかな?
わ!

神道夢想流杖術についてのエッセイだったんですよ。


もう30年以上前ですから
著作権も引っかからないでしょうし、
短い文章ですから
全文掲載してみます。


神伝夢想流

 東京に今なおクサリ鎌の術を伝える人がいるそうだから型を見せていただこうと、
一昨年訪れたことがある。
ところが主人は戦災でクサリ鎌を失った由で、
「私はクサリ鎌をやるにはやりますが、元来は杖(じょう)を学んだものです」
「杖と仰有(おっしゃ)ると、夢想権之助の?」
「左様です。福岡に夢想権之助の神伝夢想流が今なお伝わっておりまして、
自分はそれを学んだものです」

 東京の警視庁で杖を教えている清水隆次という先生であることが分った。

 清水さんは昭和五年の天覧試合だかに杖術の型を披露するため、
神伝夢想流の先生にともなわれその高弟として上京したのだそうだ。
そのとき杖の威力が警視庁の認めるところとなり、
清水さんが乞われて東京に止って術を伝えて今日に至っている由。

 むかし共産党その他の暴動対策に警視庁の新撰組という棒部隊が出動したが、
これぞ清水さんが術を伝えた産物で、あの棒が神伝夢想流の杖だそうだ。

 清水さんから杖の型を見せていただいて、一時はただ呆然とするほど驚いたものである。

 生涯不敗を誇った宮本武蔵も夢想権之助の杖にだけは手ひどい目にあっている。
ヒイキ目に見て引き分け程度の勝負であったらしいが、
武蔵という人は後世の剣客と違って、
剣の他流だけを相手にした人ではなく、
槍でもクサリ鎌でもあらゆる武器も相手と見て剣を学んだ人だ。
そういう武蔵だから、ともかく杖と一応勝負に持ってゆけたが、
一般の剣客ではとうてい問題にならないだろうと私は思った。

 剣というものはツカと刃がきまっていて、攻撃は一点からしか起らないが、
杖は全部がツカでも刃でもあるし槍でもあり、剣のつもりで一点を見ていると、
上下左右の思わざるところから攻撃が起り、
まるで百本の杖に攻められているような幻惑をうける。

 その上、両手の幅と頭上へ手をのばした高さがあれば使えるから三畳の室内で自由に術をふるうことができる。
棒を刀のように振り廻すものとでも考えたら大マチガイで、
まるで棒が手中に吸いこまれて、
前後左右上下の諸方から無際限に目にもとまらぬ早さでとびだし襲いかかってくるものと思い知っておかねばならぬ。

 男女ともに護身用としてこれほど得がたい術はないように思ったが、
特に家に留守をまもる婦人にはこの上もない術であろう。

 もっとも人が護身用の術を必要とするような時代は慶賀すべきではないけれども、
血なまぐさい乱世の気配は遠ざかるどころか益々近づくおもむきもあって、
かかるときに、大男の暴漢ヌッと室内に上りこむや、ギャッと叫び、
とたんにヒバラを押えてひッくり返っている。
小娘が四尺二寸の杖をたずさえてニコヤカに現れるなぞという図は愛嬌もあり実効もあって面白い。

 亭主の威力地におち、女房が武力をふるうに至ると、乱世もおさまるかも知れない。
(原文まま)


とありました。

高校生の頃に読んだはずですが、
まったく記憶にありませんでした。
当時さほど感心した本でもなかったのですが、
よく手放さず持っていたものです。

坂口安吾にここまで書いて貰えるとは!
さすが杖術ですね。



それにしても
安吾は清水先生の杖術を見て書いている訳ですよね。

それって五本の乱れだったりして。

・・・う、羨ましい!





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よろしくお願いします。

信州で制定杖道を学んでおります、五島と申します。

以前から何度か拝見しておりましたが
多伎にわたり貴重な情報いつもありがとうございます。
日々の修行の糧となっております。

私は文学科出身にして恥ずかしながら、これまで縁なく、坂口安吾氏の文章を始めて読ませていただきました。
杖についてこれほど明確に書かれていることに驚きとともに関心いたしました。

坂口氏の他の著作にも興味を持ったので、また手にしてみたいと思います。

こちらこそよろしくお願いします

はじめまして杖禅如水です。

長州で神道夢想流杖術を学んでおります。

文学を学んだ方らしい流麗な文章で、
拙文に過分なご評価を賜り、ただ恐縮するばかりです。

既にご存知かもしれませんが、
坂口安吾氏のものとしては、

明治開化 安吾捕物 その十三 『幻の塔』において
清水先生、鈴木先生の杖術取材を
作品に生かしていらっしゃるようです。

当時の作品ですので
今では使用不可の表現等も含まれますが、
PCで簡単にご覧になれますので
宜しかったら読んでみられると
良いかもしれません。

信州は制定杖も、古流も盛んでいらっしゃると伺ったことが
あります。
もし、宜しければ今後も親しくお付き合い下さいますよう
お願い申し上げます。
プロフィール

杖禅如水

Author:杖禅如水
岩目地光之一貫に弟子入りし、杖術、居合を学んでおります。

所属は日本杖術協会下
山口県杖術協会です。

下関の片隅にあります一貫堂系『如水館』代表として、個性が豊かな(過ぎる?)皆さんと共に隣県福岡黒田藩ゆかりの杖術を稽古しております。

【如水館】
場所:下関市王喜公民館講堂
曜日:毎週木曜日
時間:19:00~21:30

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